はじめに
Visual Studio 2022を使っていると、ある日突然「起動しない」「スタート画面が表示されない」といったトラブルに遭遇することがあります。
本ブログでは、Visual Studio 2022が起動しなくなった場合の対処法を、分かり易く紹介します。
Visual Studio 2022が起動する仕組み
まずトラブルの原因を特定するため、Visual Studio 2022 の起動プロセスを説明します。
- devenv.exe の起動
Visual Studio の実行ファイル(devenv.exe )が起動され、Visual Studio 2022の初期化が始まる。 - ライセンスの検証
「%LOCALAPPDATA%\Microsoft\VSCommon\OnlineLicensing」 にあるキャッシュを参照し、ライセンスの有効性を確認する。- %LOCALAPPDATA%
C:\Users\ユーザ名\AppData\Local を示す。
- %LOCALAPPDATA%
- 拡張機能の読み込み
ReSharperなどの拡張機能が順次読み込まれる。SafeModeでは読み込みをスキップ可能。 - ユーザー設定の復元
%APPDATA%\Microsoft\VisualStudio に保存された設定ファイルを読み込み、前回の状態を復元する。- C:\Users\ユーザ名\AppData\Roaming を示す。
- C:\Users\ユーザ名\AppData\Roaming を示す。
- ワークロードの初期化
C#や.NETなど、インストール済みのワークロードに応じて必要なコンポーネントを初期化する。 - スタートウィンドウの表示
最近開いたプロジェクトやテンプレートが表示され、ユーザー操作が可能になる。
Visual Studio 2022 が起動しないときにまず行うべき診断
ライセンスキャッシュの確認
%LOCALAPPDATA%\Microsoft\VSCommon\OnlineLicensing フォルダ内の「default.metadata」 が NULL 埋めされていたら破損。
SafeMode で起動できるか確認する
ファイ名を指定して実行(「ウィンドウズキー+W」)で、「devenv.exe /SafeMode」コマンドが実行できるか確認する。
拡張機能を読み込まないで起動するので、起動できた場合は拡張機能が原因の可能性が大きい。

起動ログを確認する
「devenv.exe /log」で起動後、ログファイル「%APPDATA%\Microsoft\VisualStudio\Version\ActivityLog.xml」内のエラー内容(例:ライセンス検証失敗、拡張機能クラッシュ)を確認する。
TEMP環境変数の確認
セミコロン付きや無効なパスがあると起動に失敗します。
Visual Studio 2022 が起動しない原因と対処方法
ライセンスキャッシュ破損
Visual Studio は、起動時のライセンスを、毎回オンラインで確認するのではなく、以下のフォルダにあるキャッシュファイル default.metadata 等を参照します。
%LOCALAPPDATA%\Microsoft\VSCommon\OnlineLicensing
ライセンスキャッシュが破損した場合の症状
- Visual Studio が起動直後にクラッシュ
- スタート画面が表示されず、プロセスが即終了
- ログに「License validation task failed unexpectedly」などのエラーが記録される
対処方法
以下のようにして、キャッシュのリセットを実行します。
「%LOCALAPPDATA%\Microsoft\VSCommon\OnlineLicensing」のフォルダ名称を 「OnlineLicensing_bkup」等の名称に変更し、Visual Studio を再起動。こうする事で、新しいキャッシュが自動生成される。
※この操作はライセンス情報の再取得を促すもので、ライセンス自体が無効になるわけではありません。

拡張機能の不具合
拡張機能が不具合時の症状
- スプラッシュ画面が表示された直後に強制終了
- スタートウィンドウが表示されず、プロセスが消える
拡張機能の不具合かどうかの確認方法
- SafeModeで起動してみる
devenv.exe /SafeMode
SafeModeでは拡張機能が読み込まれない為、このモードで起動できる場合は拡張機能が原因の可能性が高いと言えます。
- 起動ログを確認する
「%APPDATA%\Microsoft\VisualStudio\17.0\ActivityLog.xml」に以下のような記述がある場合、拡張機能がクラッシュの原因です
Extension 'ReSharper' failed to load.
Exception: System.NullReferenceException...
対処方法
- SafeModeで起動して、拡張機能を無効化 又は、削除
- SafeModeで起動(「ファイル名を指定して実行」で、
devenv.exe /SafeMode) - メニュー → [拡張機能] → [拡張機能の管理]
- 問題のある拡張機能(例:ReSharper)を「無効化」または「アンインストール」
- SafeModeで起動(「ファイル名を指定して実行」で、
- Visual Studio Installer で修復(拡張機能の不整合も含めて再構成される)
- スタートメニュー → Visual Studio Installer → 対象バージョン → 修復
アップデート失敗
アップデート失敗は、構成ファイルの破損やネットワーク不具合、インストーラーの不整合などが原因で発生します。
アップデート失敗時の症状
以下の様に、症状は多岐に渡る。
- Visual Studioが起動しない
- スプラッシュ画面が表示された直後にクラッシュ
- プロセス(
devenv.exe)が一瞬で終了する
- Visual Studio Installer自体が起動しない
- SafeModeでも起動しない
- 特定のワークロードが消えている
- IntelliSenseが動作しない
- ツールウィンドウが表示されない
- 起動ログ(ActivityLog.xml)に下記のような構成エラーが記録される
Package 'Microsoft.VisualStudio.Shell.Connected' failed to load
- Visual Studio Installerでの症状
- 「修復」ボタンがグレーアウトしている
- インストール済みの構成が表示されない
- 「アップデートに失敗しました」などのポップアップが出る
対処方法
- Visual Studio Installer で修復を試す
- スタートメニューから「Visual Studio Installer」を起動
- 対象のバージョン(例:Visual Studio 2022)を選択
- 「修復」ボタンをクリック
- 修復完了後、再起動して確認
- Installer自体が起動しない、修復できない場合は、Microsoft公式の「InstallCleanup.exe」ツールを使ってインストール情報を完全に削除します。
- 管理者権限でコマンドプロンプトを起動
- 以下のコマンドを実行
"C:\Program Files (x86)\Microsoft Visual Studio\Installer\InstallCleanup.exe" -i 17
※ -i 17 は Visual Studio 2022 のバージョン指定
クリーンアップ完了後、Visual Studio 2022 を再インストール
- アップデートが「ダウンロードできない」「接続できない」といったネットワーク系のエラーで失敗する場合
C:\Windows\System32\drivers\etc\hostsを管理者権限で開く- 「93.184.215.201 download.visualstudio.microsoft.com」 を追記
93.184.215.201は、米国の CDN(コンテンツ配信ネットワーク)やホスティングサービスが使用する IP アドレスのひとつで、特に example.com というテスト用ドメインのホスト先。本来の Microsoft の更新サーバーではなく、接続テストや一時的な回避策として使われることがあるだけで、恒久的な解決策ではありません。
- コマンドプロンプトで、「ipconfig /flushdns」を実行

TEMP環境変数の誤設定
よくある誤設定
TEMP=C:\Temp;(末尾にセミコロン)- パスが無効と認識され、起動失敗
- パスが無効と認識され、起動失敗
TEMP=(空欄)- 一時ファイルが保存できず、クラッシュ
- 一時ファイルが保存できず、クラッシュ
TEMP=D:\フォルダ名(存在しないパス)- ファイル書き込みエラーで起動不能
- ファイル書き込みエラーで起動不能
TEMPがネットワークドライブ- アクセス遅延や失敗で起動不能になることも
- アクセス遅延や失敗で起動不能になることも
まとめ
Visual Studio が突然起動しなくても慌てる必要はありません。C#等のソースはIDEとは別フォルダとして保存されているので、最悪 他のIDE(VSCode)でも使用が可能です。
先ずは起動のプロセスを理解し、起動しなくなった原因を突きとめるために診断を行う事です。そして、その診断に基づいた適切な処置を実行する事で再起動する事が可能となります。

